エクアドルのバナナとサチラ族

 エクアドルは何を隠そう、バナナの輸出量が世界一の国。輸出量が1位といえば、バラの花も世界一らしいです、エクアドルは。特にシエラの地域では、道端でバラの花を売っているのをよく見る気がします。ですが、今回はバナナについて。

私が住んでいるアマゾン気候の地域でももちろん作られているバナナが、エクアドル国内の中ではコスタと呼ばれる海岸沿いのあたたかい気候でのバナナ栽培は規模が異なり、エクアドルでもっとも栽培されている地域です。

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ついている一房一房にかけられているビニールや木が倒れないための竹の支えはすべて手作業。大変な仕事です。ちなみにこの1本のバナナの木に成る一房が収穫されたら、その木はそれでおしまい。まわりに生えている他の木がまた房をつけます。

 

そういえば日本でもスーパーでバナナを買うときに「エクアドル産」の文字を見かけたことはあったかな~と感じます。食べていたのはフィリピン産が多かったかもしれません。バナナ農場はスペイン語では「banadero」。「バナデロ」と読みます。そんな中、驚くことに日本の反対側のこのエクアドルでバナナ農園を経営されている日本人の方がいます。

その名も「田辺農園」。経営者の方は田辺正裕さんという方。通常時500人から、忙しい時期600人という総従業員数のこの田辺農園では、田辺さんを含めて経営管理で日本人が3人ほど働かれていますが、それ以外はみなエクアドル人です。エクアドル×日本外交100周年記念行事にも実行委員長として関わられていた人物で、隊員にもとても有名な方です。2年の任期中にエクアドルの隊員は一度は訪れるであろう場所です。現在は近隣に隊員がいるので、彼が中心となり、いつもボランティアの田辺農園ツアーの取りまとめをしてくれています。

 そのバナナ農園がある場所は、サントドミンゴ・ロス・ツァチラ県という県のコンコルディアという州。

地図だとこのあたり。キトの西側に位置します。「サントドミンゴ・デ・ロス・コロラドス」というあたりです。

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このあたりはキトから車で4時間ほど、また、最大の都市グアヤキルにも比較的近いため、コスタと首都の間を結ぶ道も走り、特にこのコンコルディアがある県の県都サントドミンゴは人々も車も行き交い、物のやりとりや仲介という行為が自然と発生する大きな街です。

農園が位置するのは、コンコルディアのバスターミナルから車で40分ほど走ったあたりでした。

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ほんとに立派な田辺農園のバナナ。

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手と比べるとこんなかんじ。

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日本のスーパー向けには小柄なバナナと決められているらしく、大きなものは規格外出荷はできず、すべて肥料に。

ということで可能な限りの有機栽培を行う田辺農園では、3種類の肥料を使用します。出荷できないバナナを発酵させる肥料。

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ミミズコンポストにより栄養のある土を作る手法。

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肥料を作る過程で生成される液体を集めて液肥として使うもの。説明してくれた彼は、ここ田辺農園で一からすべて学んで今やベテラン感を醸し出していました。

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エクアドルにおける労働者層「trabajadores」と呼ばれる人々。主に肉体労働をする人々です。もちろんバナナ農園においては欠かせない労働力ですが、市役所にもいます。市役所同様、通常短期契約なのが一般的なように思われますが、この田辺農園ではみんな長期契約だし、お給料は他のバナナ農園に比べて少し低めな部分もあるようだけど、福利厚生の面で満足している方が多いため、一度ここを退職してしまってもここがよかったと戻ってくる人も多いそうです。一番はお給料の振り込みが遅れないこと。給料振り込みが遅れるってどういうこと?ってかんじもしますが、エクアドルではふつうのこと。給料日はあってないようなもの。毎月市役所でも同僚はみんなこそこそとお互いに振り込まれたかを聞き合っています。
食堂もあります。しかもおいしいごはん。この日いただいたのは、通常のものより少し豪華バージョンにしてくださったとのこと。

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バナナの収穫から梱包まで。

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園内にたくさんあるレーンを通って、園内に4つある梱包作業までを行う作業場にバナナ運ばれます。

それをしっかりチェック。

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洗って房ごとに切る。

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ここで出荷用の一房にカッティング。

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しかし、上のかごに載せられたバナナは規格外で、出荷はされずすべて肥料になるバナナ。

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大きな水槽。この水槽も毎日洗うらしいです。

そして最終段階。田辺農園のシールが張られます。

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梱包。

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番号などで、どの人がどの部分で扱ったものかがわかるようにマーク。エクアドルでここまでやるのは大変だと思いますが、しっかりした品質管理が伺えます。

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田辺さんのお父さんもエクアドルで農業をされていたそうですが、バナナ事業を始めたのは田辺さん代からとのことで、まったくの素人のところからバナナ栽培を始めたらしい。

エクアドルの土はとても良いらしく、放っておいてもいろいろできてしまうため、エクアドル人はあまり土壌改良や、さらに良いものを収穫するための試行錯誤などはしないらしい。

エクアドルのバナナ農園マップを使って説明してくださる田辺さん。

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エクアドルで権力を握る卸商社の財閥問題などなど、いろいろな背景が絡み、現在は日本の企業と田辺農園さん自体が直接輸出入のやりとりを行っているそうです。

ここエクアドルから16,000キロ離れた日本に、エクアドルのおいしいバナナを届けてくれている田辺農園さん、見学させていただきありがとうございました。

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とってもすてきな風景ですが、暑い太陽とバナナの下で毎日働くたくさんのエクアドル人と数人の日本人のとてつもない努力により、エクアドルの裏側の日本まで届けられるバナナ。バナナに限ったことではないけど、普段は目に見えない部分への感謝の気持ちを忘れない人間になろうと、改めて勉強になりました。

バナナ農園の真ん中で、今回訪れたみんなと。

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そしてこのサントドミンゴ周辺には「サチラ族」という先住民族が生活しています。

こんなかんじ。サチラ族の男性は髪の毛を中心部分でまとめ、その部分を植物を使って赤く染色しているのが何よりの特徴。

f:id:reikomiyahara:20190325063023j:plainこれが髪の毛を赤く染めるために使用する植物。

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私たちにも体験させてくれます。

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市の中心からわずか車で20分ほど奥に入ったあたり。今回見させてもらったのは、2時間ほどで彼らが住む周辺の木々や植物をどのように日常生活に利用しているか、彼らの服装、彼らの住居や人が亡くなったときの習慣などを旅行客向けに説明して回る、わかりやすく構成されているものでした。とてもおもしろかったです。

男性用の服。

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女性用の服。

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音楽と踊りはやっぱり大切。f:id:reikomiyahara:20190325070719j:plain

お清めに使う儀式のセット。

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やり投げ的なあそびを使っての娯楽。

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お料理するとき。甘くないバナナをすりつぶして、ごはんに添えます。

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家族が亡くなった時の棺。棺にくくられる紐がちぎれると(通常2~3週間ほどとのこと)、死者の魂は成仏したことになるらしい。たまにちぎれないこともあるらしい。

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このツアーにもバナナ農場の見学とセットで来たかったものだったので、今回、訪れることができてよかったです。

サントドミンゴの街をみんなで散策。

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大きな街だけに高台からの夜景もとってもきれい。

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そしてそして、2017年度1次隊の現職参加組5人の同期が帰国しました。無事に日本に着いたとのこと、ほんとに何よりです。改めて1年9か月おつかれさま。一緒に彼らとエクアドルに来られて切磋琢磨することができました。世界中でもどんどん現職参加組の帰国報告が始まっています。

今回の最終報告会は、なんだか自分が3か月後このような報告をすることができるのかという不安ばかりが募る報告会傍聴となりました。

そんな中うれしい出来事も。キトから帰ってくると、活動の件で進んでいないと思っていたことが意外に進んでいたりして、私がいない間にもカウンターパートのオルランドや同僚が手伝ってくれているのをすごく感じました。同僚のディエゴも新しいアイディアをどんどん出してくれています。彼から学ぶこともたくさん。形になるかはわからないけれど、まずはやってみるのみ、です。

そして今日、3月24日はエクアドル全国統一地方選挙の日。これからの5年間、各自治体を統括する体制の礎となる人物が決まります。キトから帰ってきて、最後の追い上げイベントにも拍車がかかり、それぞれの集会所から近い私の部屋は夜遅くまで、音楽と演説が響き渡っていました。おかげで安眠できず寝不足。いま現在、開票結果速報がラジオから流れています。そんなこんなで果たして選挙の結果はいかに…。

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エクアドル2017年度1次隊同期、現職組の帰国報告会後の集合写真。3か月後、私たちも追いかけます。それまで残りの活動がんばるぞ。