政治っぽい話

先週くらいから雨季が本格化しており、涼しいだけではなく、雨がザーザー。

昼間も夜も明け方も。特に夜から明け方の雨が強い気がします。任地のまわりでは土砂崩れも起こり、道がふさがれている様子もSNSを通して情報があがってきたりしている今日この頃です。ここまで雨季が本格的じゃないときは、雨が降ってもすぐ晴れて太陽が出たりもするのですが、雨が止んでも基本曇っています。

市役所の事務所から。雨が激しく降っています。

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任地の川の向こう側、少し高台になっている地域からの眺め。その名も「barrio visto hermosa」。「きれいな景色」という名前が付けられた地域。市役所からタクシーで5分くらい。前に部署にいた同僚が住んでいます。

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さて2月に入り解禁されたもの、それは「公の選挙活動」。3月中旬ころの全国統一選挙に向けた活動。エクアドル全土であります。今回の選挙は地方自治体で、各県の県知事と県内のそれぞれの市長です。私の任地で言うと、サモラ・チンチペ県の県知事選とヤンササ市の市長選になります。

各知事、市長の任期は通常5年で、現知事、現市長たちの任期は2014~2019年でした。そしてこの3月に選挙が行われ、その後いろいろな手続きを踏むのか、正式に5月から着任、新たな任期が始まります。

ということで今回はせっかくの5年に1度の機会にエクアドルにいるので、この選挙活動の様子を書こうと思います。なかなか細かいところまで理解しきれていない部分もありますが。

各候補はエクアドルにもある政党のようなところから出馬します。候補者は各県知事候補、各市長候補がそれぞれ同じ政党グループからセットで立候補しているようです。知事と市長が別の政党同士で当選してしまう(ねじれ国会的なイメージ?)こともあることもあるらしいけど、ほぼないのではないかなと思われます。そしてそれぞれの市長候補は自分の右腕になるような人々、市役所の中では「consejal」と呼ばれますが、日本語に直訳すると「評議員」となります。市長に近い存在の人で市民から直接いろいろな相談を受けたりもする、いわば市長と市民の橋渡しができる立場の人で、何かと形式を重視するエクアドルで市長のポストを形式づくる人。でもうちの市役所では市長が市役所にいる日は市民も自由に市長と直接市長室で会って相談することができ、たくさんの市民たちが市長室の待合室で順番待ちをしている様子も見受けられます。

この評議員という人についてもう少し説明すると、任地ヤンササ市には中心部と2つの農村地域を統括しており、それぞれChicaña、Los Encuentrosという名前のこの2つの農村地域にもある程度独立した村役場のようなものがあり、そこで日々地域の統括業務を行っています。この評議員と呼ばれる人たちは、ヤンササ市の中心部からだけではなく、この農村地域から選出しなければいけなかったりもするようです。現に今の市長は5人の評議員たちを抱えていますが、5人のうち2人が市内中心部、1人がChicañaという1つの農村地域、あとの2人がLos Encuentrosというもうひとつの農村地域から選出されています。なぜだかこの評議員のオフィスは私の部署の向かい側にあるので、私は評議員さんたちとは全員仲良くなって、適当だけどみんな楽しくていい人たちです。数人が日本語で挨拶してくれます。農村地域から選出された2人の評議員さんと。

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コネや人脈が大切にされるここでは、きっとそれぞれの地域に住む住民が一番に相談できる身近な存在を置いておけるよう、それぞれの地域からも選出しているという意図を感じます。ということで市長候補は、この評議員候補に値する人も選出し、擁立して共に選挙戦を戦います。なので日本のそれより団体戦感覚が強い気もします。というか日本の政治家が話しているような「派閥」「〇〇グループ」という話がここでは選挙活動を通して市民にまで浸透しています。それだけコミュニティが小さいということ、あとは当選したときの利益が彼ら市民にも直接的に関わるので自然と力が入るのでしょうか。直接的な利益が関わるというのは一番は働き口。例えば市役所で働く中で長期雇用とされていない人は、市長が変われば、その派閥に一気にすべて一新されます。自分を雇ってくれた今の市長を応援するという人が市役所内には多いけど、それでもいろいろな経緯やツテがあるのか、市役所の中でも現市長とは別の派閥を支持している人もいます。中でも本格的に他の派閥の一員として選挙活動を行う場合は、いったん市役所の職から離れていった人もいます。仕事といえばもっともな理由、まぁ白いといえば白い理由と思ったりもしますが、でも本当の実力や努力が実らない、そんな構造にもつながっている気もします。前市長時代に実力もあって、めちゃくちゃがんばってても新市長になったら登用されず、がんばらなくても結局は人脈とコネが左右したりもします。きっと他の部分では黒いやり取りももしかすると行われている可能性もあるのではと私は思っています。「支持してもらうかわりに、当選したら〇〇するよ」みたいなやつとかお金とか。日本では国の政治家ベースでしか発生しないそんなやり取りも、市民と近いところで市民も交えて横行してしまうのもここの特徴なのかもしれません。

(書いたようにそもそものコミュニティが小さい、狭い、候補者が近い存在という環境的な部分とやはりまだまだ貧しさからくる目の前の利益の優先という経済的な部分、そして自分たちの利害が関わると規律とか忘れる、悪いことを悪いと思わない、そんなエクアドル人の性格の一部分?もあるかもしれません。語弊がないように補足しますが、もちろん全員ではないし、特に経済面と性格面ではエクアドル全員ではありません。経済的には裕福な人もいます。でも日本人のような道徳心を育てるのはなかなかむずかしいように思います。これは国自体の教育の話。)

 

では、話を戻して、現在任地における市長候補者は私が認識しているだけで、4人=4グループです。エクアドル第一の都市グアヤキルでは候補者が20人いるとかなんとか、きのうニュースで言ってました。

それぞれのグループは彼らの党を象徴するカラーを持っているので、色で紹介していきます。

  1. 「グループ赤」
  2. 「グループ白」
  3. 「グループレインボー」
  4. 「もうひとつのグループ白」

となっています。

まず①の「グループ赤」。

市長候補のお名前は「Manuel Valdivieso」(マヌエル バルディビエソさん)。

この赤いシャツの人。

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この人は任地にある学校の先生。ステイ先の娘の旦那さんは前市長さんで、彼も応援しているグループです。余談だけど、彼が市長時代にはじめて最終処分場を作るというプロジェクトが入り、作られました。それまではみんな川にすべて捨ててたらしい。うそでしょ…。でもそういう習慣化された中で、このままじゃだめだと、実際にスイスNGOの援助を受けながら、最終処分場が任地に作られました。こういうところからもこの前市長さん、私のステイ先の義理の息子さんにあたりますが、任地にまだまだ当時足りなかったインフラ整備を推し進めていたのかなという私のイメージ。

このマヌエルさんも本職はこの学校の先生です。ステイ先の家族たちはこのマヌエル候補者に高校時代習っていた人もいるし、何よりも前市長として働いていた娘の旦那さんの派閥ということもあり、この「グループ赤」を支持しているかんじがひしひしと伝わってきます。部署に新たに来たディエゴも彼を支持しているとのこと。高校の先生の資格を持っているディエゴも、学校関係の何かを通して彼の考えに共感したみたいなかんじのことを言っていました。やはり学校機関、教育というのは人々に大きな影響を与える可能性を秘めた大事な分野ということを実感します。エクアドルに来てから「教育」についてこんなにいろいろ考えたり感じたりすることになるとは思いもしませんでした。

ちなみに私は市長立候補者マヌエルさんとは面識はありません。

グループの標語は「Mi proyecto eres tu.」(「私のプロジェクト、それはあなた。」)シャツの色は赤。f:id:reikomiyahara:20190206040656j:plain

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みんな赤色です。聴衆の前に座っているのが、市長立候補者や評議員候補者、その他有力支持者です。

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そして②の「グループ白」。市長候補のお名前は「Maria Lalangui Cabrera」(マリア ラランギ カブレラさん)。そう、マリアという名前からも察するように女性候補です。初の女性候補者、もちろんもし彼女が当選したら初の女性市長の誕生です。

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このグループは現市長の派閥からの立候補です。ということで現市長の派閥ということはこれまでも市役所で働いていました。所属は「obras publicas」という部署。これは「公共事業部」。エクアドルの市役所の中ではこの公共事業部の権力は相当なもので、まぁきっとまだまだ開発されていくところが盛りだくさんだから、自然と彼らの仕事が多く、いろいろな資材も持てる、大きな予算も持てるということから権力が強くなるのだとも思いますが、需要がたくさん、とにかく重要ポイントとなる部署。前から私は勝手に「やり手」感を感じていたけど、話すと私に気を遣ってくれるのか柔らかいかんじで、何度か会話したこともありました。彼女は私の着任時からこの公共事業部の長として、ヤンササのインフラ事業をマネジメントしていました。任地で日本大使館の草の根支援を受けた橋のプロジェクトにも主要人物として関わっていたようだし、そういうこともあってか、まぁいろいろ経験豊富で見識もたくさん持っているからか、はたまたこうなる市長選も見据えていたのか、それはわからないけど、私に対してもとても親切ですし、会うと丁寧に挨拶してくれます。ということで私も彼女とは面識がある。3ヵ月ほど前に任地で環境教育部会を開催し、はじめにみんなで市長挨拶に行きましたが、この場にも彼女は来てくれて、今の市長が彼女の存在の大切さを私たちに語っていました。市役所における公共事業部のマネジメントがいかに鍵を握るかも、このときの話からなんとなく感じ取られました。現在は前から比べると少し生活の基盤的な事業がある程度進んだということなのか、今の市長は観光開発という観点から街の繁栄を狙っている気がします。人々が集まれるスポットや滝の遊歩道を整備したりなど。

 

こんな風に車を使っての行進による選挙活動も。この行進では車はクラクションを鳴らしまくる。きのうは夜中にクラクション行進してました。ここでは騒音という概念がないのでしょうがないけど、けっこううるさい。

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選挙活動の会合ではそれぞれいろいろなコミュニティを回ります。中心部から農村部まで。

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これは若者グループの票を集めるためなのか、この政党を支持している若者たち向けのイベント。こういうプログラム内容を見るとほんとに普段出さない試行錯誤力というか、いろいろなアイディアが出されているなと感じます。

そして先に書いた評議員候補のひとりとしてマリアが擁立したのは、同様にこの公共事業部でこれまでも彼女の右腕として働いていた同僚でした。

このグループ名は「creo」。ということで今の市長もcreo党の人。Creoとは「信じる」という動詞の一人称形。標語は「Yo creo en ti Maria.」(「私はマリア、あなたを信じる。」という意味。)です。シャツの色は白。

 

そして3つめ。「グループレインボー」。

このグループはエクアドル全体でもインディヘナ民族が主に支持しているグループです。任地でもこのグループがひとつの勢力になっています。

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マフラーにレインボーのストールを使うのがこのグループの象徴。グループ名は「Pachakti」と書き、「パチャクティ」と読む、おそらくインディヘナ民族の言葉です。そして標語は「Yantzaza, es de trabajo.」(ヤンササ、仕事から。)まぁ訳は直接的すぎますが、たぶん仕事からすべてが始まるとかそんなイメージだとは思います。

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他の同期が住む山岳インディヘナが多く住む街に遊びに行ったら、このパチャクティのレインボー看板を多く見かけました。さすがインディヘナが多い街。

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私の任地にもサラグロという街を起源とする山岳インディヘナ「サラグロ族」やオリエンテ地域を起源とするインディヘナ「シュワル族」がいるので、彼らの支持を集めていくのだと思われます。市長候補者とは私は面識がありません、最近開設された街の集会所オフィスにはよくいるのを見かけるけど。

 

そして「もうひとつの白グループ」。

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このグループは他の3つからすると少し勢いですでに負けてしまっている気がしますが、少ないながらもがんばっている気もします。でも市民からは「負けるのわかってるのに…」という少しネガティブな意見も聞きます。このグループの市長候補として立候補しているのは私の任地着任時に市長の調整役で一番市長に近い人物として働いていました。なので私も面識があります。

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今でも道ですれ違うと名前を呼んでくれます。実際は少し擁立しているメンバーも少ないように感じますが、それでもきっと最後まで戦い抜くのだと思います。

他の街でもこのグループ名の看板「Libertad es pueblo.」(「人々は自由だ」みたいなかんじ)は目にします。こちらもイメージカラーは白。

というのが現在の任地で選挙戦の中心となっている人々。

最近では街のところどころにそれぞれのグループの拠点となる事務所ができています。顔写真入りの看板を掲げたり、そういうかんじは少し日本にもあるような気もしますが、やはり市民の巻き込み力がはんぱない。熱くなる市民もやはりラテンの血なのでしょうか。

そして車。広報グッズの一つにあるのがシール。みんな車のフロントガラスやうしろのところに支持する立候補者のシールを貼ってアピール。

こんなかんじ。

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任地に着いたときは、まだ何もわからずに「なんで自分の名前を車に貼ってるのか意味わからん。そこまで自分の車だと主張したいのか、はたまた盗難防止か…」なんていろいろな想像がふくらんでましたが、選挙活動の一環でした。これは広報のためが一番な気もするけど、「この家は〇〇の派閥でこっちは●●」とわかりやすくなってしまい、それはそれでめんどくさそうだなと私は思いますが、エクアドル人は貼るのがふつう。

これは市役所のマーク。Yantzaza市がオリエンテのインディヘナ民族「シュワル族」の言葉で「蛍の谷」という意味を表す言葉であることから、任地の象徴は「蛍」。それを象ったマーク。

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中には、それぞれの市長の任期を印刷しているものもあって、そういうものは任期終了後残っていても使えません。もったいない。

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これは3R広報用の巾着リュック。学校で何か授業をしたあとに賞品であげようとかカウンターパートが言うから、前市長の任期入ってるけど、いいんだよね?と一応確認すると「あ、だめだ…」とのこと。使えるのにもったいない。結局全然3Rできてない。

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土日に、ある家の周りに同じ候補者のシールを貼った車がたくさん止まっているのとか見ると、一目瞭然。ここであの候補者の会合が開かれると。なんだかその光景はびっくりしてしまいましたが、これまで日本で私に身近じゃなかっただけで、日本の選挙活動もそういうところもあるのかな。どうなんだろう。でもここでは宗教信仰がふつうな分、人々の信仰心の強さとか、そういう自分が支持するものを積極的に表現するとか、そういう雰囲気もここまで選挙戦に熱くなることに通じているのかなとも思います。日本の選挙よりはやはりすべてが身近です。

もちろん全面的に支持者をオープンにしている人もいるし、中には迷っているのか、はたまた隠しているのかそんなかんじの人もいます。

たまに「Reikoは誰を応援するの?」と聞かれることもありますが(冗談半分だとは思う)、そもそも選挙権もないし、市役所配属ですが、市役所からお給料をもらっている訳でもないので、いつも「No soy parte de nadie.」(私は誰にも属してないよ。)と私も冗談半分で返します。

今回載せている選挙関連の写真はSNS上にアップされていたものを引用しました。

投票まであと1ヵ月と数週間。果たして結果はどうなるのかな~、また報告します。